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基調講演1

昆虫の興味深い生態と生息環境変化による昆虫への影響

                     日本鱗翅学会東北支部幹事
                   宮城昆虫地理研究会代表 
                        阿部 剛さん

 昆虫は様々なテクニックを駆使して身を守っています。スズメバチにソックリな蛾の仲間のクビアカスカシバ、砂浜の砂の模様をしたヤマトマダラバッタ、目玉模様のはねを持つジャノメチョウの仲間など、擬態や保護色により天敵から身を守る昆虫たちの興味深い生態を紹介します。
 次に、近年、全国的に見られる里山や草地に生息する昆虫の衰退要因について紹介します。里山や草地は、薪や炭の生産の場、農耕用の家畜の餌場として古くから利用され、人間生活の営みと深い関わりを保ってきました。しかし、1960年代の高度経済成長期から林業や農業の形態が大きく変化し、各地で管理放棄による里山の荒廃や草地の減少が見られるようになり、そこに生息する昆虫の減少要因になってしまいました。
 最後に、東日本大震災による昆虫の生息環境の変化について紹介します。宮城県からは津波の影響を受けた海岸部の昆虫の生息地の変化、福島県からは福島第一原発事故による平野部の自然環境変化などの現状を紹介します。

基調講演2

震災後宮城県から限りなく絶滅状態になってしまった

トンボ2種

                     日本トンボ学会会員
                   東北大学大学院農学研究科教授
                           牧野 周さん

 2011年3月11日三陸沖で発生したマグネチュード9の未曽有の大地震と大津波は,東北から北関東の太平洋岸に甚大な被害をもたらし,宮城県沿岸部に生息するトンボ類にも大きな影響を与えました。

 さらに,総額32兆円が計上された未曽有の震災復興事業は,震災以上に大きな影響を与えています。ここでは,震災後限りなく絶滅に追い込まれている宮城県のヒヌマイトトンボとコバネアオイトトトンボの2種について紹介します。

 なお,両種とも環境省指定の絶滅危惧IB類に分類され、震災前より保護の重要性は指摘されていた種でした。同じランクに指定されている2種ですが、震災後の両種の生息状況を調査すると、震災と震災後の影響は大きく異なっていました。

 震災後、一定の保護策がとられたにもかかわらず、まったく復活の兆しはなく絶滅状態に追い込まれたのがヒヌマイトトンボで,震災後に驚異的な回復を見せたにも関わらず,有効な保護策がとられることなく事実上絶滅させられたのがコバネアオイトトンボです。

 両種にとって、やはり日本は住みにくい国なのかもしれません。自然の猛威を含めた大自然と復興の調和をどう図っていくのか、突き付けられている課題の重さを感じさせられています。
 

ヒヌマイトトンボ 

宮城県名取市広浦2007年6月30日撮影

コバネアオイトトンボ1

 宮城県亘理町吉田2013年9月28日撮影

コバネアオイトトンボ2

 宮城県名取市広浦2012年8月11日撮影

スズメバチにソックリな蛾の仲間

クビアカスカシバ

砂浜の砂の模様をしたヤマトマダラバッタ

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